富永仲基

人と交わる時には心から誠意をつくし、悪い遊びをせず、優れた人を尊敬し、愚かなるものを侮らず、またわが身にあてはめて考え、悪いことは人にしないことである。人当たりが鋭く、角のたつようなことはせず、ひがんで頑固になることもなく、せかせかとせわしい態度をとらず、怒ることがあっても、度を越えず、喜んでもその立場を失わないことである。楽しみごとにもおぼれず、悲しみごとにも自分を見失わず、なにごとにも十分であろうとなかろうと、みな自分にとって幸いなことであると、そう思って十分心に満足を覚えることである。受け取るべきでないものは、たとえ塵であっても受け取らず、また与えなければならないときは、天下国家であろうとも、それを惜しまず与えることである。衣食のよしあしも、わが身の程にしたがって、奢ることなく、またけちけちすることなく、盗みをせず、偽りをせず、色事を好んでも理性を失わず、酒を飲んでも乱れず、人に害を与えないものは殺さず、飲み食いにはいつもつつしみを忘れず、悪いものは食べず、たくさんものを食べないことである。暇な時間のあるときは、自分の身にとって有益な学芸・学問を学んで賢明になるようつとめることである。